まとめ。タングドラムの音が狂うという前提で考える

シリーズのまとめとして

これまで音が狂った実例とその修理について取り上げてきました。
本記事はそのシリーズの締めとして、「音の狂い」に対して私がたどり着いたひとつの考えかたをまとめたものです。

また、この考えは私がこの楽器を**「初心者の方でも」という方向性から「打楽器奏者の方へ」切り替えた結果**として言えることでもあるかもしれません。


結論は2つ

①「音階にとらわれない」
②「ユーザー自らが音を調整する」

どちらに対しても、スタンダードな6音階モデル(P6)を前提に話を進めます。


① 音階にとらわれない

基本の「音階」を設定しているのは、あくまでも私です。
カスタム音階などにも応じていますが、基本的にはすべて**「琉球音階」で製作**しています。

これは確かに、デタラメに鳴らしても南国情緒が感じられる都合の良い音の組み合わせです。

さらに音の雰囲気と沖縄感もとてもよくマッチしているので、その点も大きなメリットと感じてはいます。

しかし実際に演奏するときには、特に「沖縄感」を意識しているわけではありません。

それよりも、一つ一つの響きを味わいながら楽しんで演奏しています。

つまり、「音階」が特別整っていなくても問題はないという結論です。

「こう来たから次はこの音だ」などと考えながら演奏はしていません。
高い音に行くか、低い音に行くか。その程度の判断です。

おそらく大部分の方は、即興演奏をする場合、そのような感覚になるのではないでしょうか。

仮に楽譜的で、決まった手順の演奏を行う場合でも、必ずしもP6に含まれている音だけで事足りるとは限りません。

ということは、その点においても、「音階」は絶対的な意味を持つものではないというこになります。


② ユーザー自身が音を調整する

①で**「音階は絶対ではない」と考えるならば、
②の
「ユーザー自身が音を調整する」**という行為も、自然な延長線上にあると言えます。

プロパノータには、チューニング用として磁石が付属します。

磁石を使い、琉球音階を「メジャー音階」や「マイナー音階」へ移行することが出来ます。

磁石を付ける部分には印を付けていますが、印以外の部分に磁石を付ければ、それ以外の音の組み合わせも生まれます。

つまり、「音が狂った場合」には、その磁石を使いユーザー自身に音を調整してもらうという方法です。


音が低くなることを前提に考える

「耳の感覚を頼りに」と言わなくても、スマホアプリでチューナーはいくらでも見つかります。

ただし、ひとつ面倒な点があります。

基本的に音が狂う場合、音は低くなります。
低くなった音は、隣の音と周波数的に近づいてしまいます。

同じような高さの音が複数並ぶと、音が濁り、モヤモヤした印象になります。

その場合の解決方法もありますが、これは動画を使い、また別の機会にご紹介します。


ユーザーが行える対処方法

音が低くなることを前提に考えれば、
最初から楽器のKEYをやや高めに設定しておき、
たとえ低くなっても次のKEYへ移行すればよい、という考え方も出来ます。

これもユーザー自身で行うことが可能です。

時間は掛かりますが、音板を切り込んでいけば対応できます。

そのうえで、**「やはり元の音に戻したい」**という場合には、工房への修正依頼をしていただくのが良いと思います。


何でも出来る楽器を目指さない

ちなみに過去に、
**「磁石を使い、複数のKEYに対応できるようにしてほしい」**という依頼を受け、実際にそのような方式で製作したことがあります。

4つのKEYに対応させましたが……正直に言えば、少し欲張りすぎでした。

理論的には可能で、実際に使えるとも感じました。

しかし、高い音に複数の磁石を付けて一気に低くした場合、響きが損なわれると感じるケースもありました。


まとめ

何でも出来ると考えるよりも、

「コレしか出来ないけど、それでいい」。

結局、道具というのは、そんな考え方の方が役に立つことが多いと思っています。