A様の音の狂いの実数を参考例に取り上げます。
その前に、音の高さは長さの単位のように国際的に規格化されていて、周波数(ヘルツ)であらわされます。
次の表が大まかな数値です。
周波数とは「1秒間に何回振動しているか」という数値です。
大まかでは以下のようになります(平均律の理論値とは異なる簡略表です)。
| 音名 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド |
| 周波数 | 260 | 290 | 330 | 350 | 390 | 440 | 490 | 520 |
同じ「ド」と言っても、低い「ド」も高い「ド」もあります。それらの数値も一定の規則に従い変化します。
実際の振動は目で確認するのは難しいのですが、ギターを連想するとわかりやすいかもしれません。
例えばギターの弦をはじくとビョンビョンと弦が振動しますよね。
その弦が一秒間に何回振動しているかで音が決まっていきます。
これはギターやピアノのように楽器に限らず、すべての音に当て嵌まるので、例えば絶対音感がある人などは、机をたたいた音を聞いても「ド」だったり「レ」だったりがつかめるのだそうです。
*説明自体はかなり簡略化しています。
音の狂いの実例で上げたAさんの場合
| 音名 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド |
| 周波数 | 260 | 290 | 330 | 350 | 390 | 440 | 490 | 520 |
| 実数 | 253 | 290 | 300 | 335 | 390 | 435 | 490 | 520 |
赤字の音が狂っていた音です。
「ミ」の狂いが大きいですね。ほとんど「レ」に近くなっています。
ドレミファソラシドにはこれ以外にいわゆる半音(#やb)の音があります。
狂いの大きい「ミ」の音は、レの半音「レ#・周波数311」を通り越しています。
つまり、
「少しズレたミ」ではなく、
「ミとして機能しない音」になっている
と言ってよいレベルです。
音の狂いは「ある日突然」起こるわけではない
ところでこれは一気に音が下がったわけではなく、徐々に下がっていった結果です。
表中の「ド」は一秒間に260回振動していたものが253回に変化していますが、気が付かないケースも多いと思います。。
その音に耳が慣れていっちゃいますし、特に一人で演奏している場合はわかりにくいですね。
しかしその小さな音のずれは他の音程楽器と合わせた際に、モヤモヤした違和感として現れるかもしれません。
なぜタングドラムの音は狂うのか
私は今までに何度も「タングドラムの音は狂います」とブログで書いてきましたが、過去記事は総削除しましたので、ここでもう一度「なぜ狂うのか?」を。
ひと言で言えば「金属疲労」です。
基本的にタングドラムの音はその音板の長さで決まります。
いくら叩いても物理的には長さは変わりません。
音を出したときにはその音板は細かく振動しています。手で持てばその振動が伝わってくることで実感できると思います。
その振動を音板の根元部分が全て受け止めています。
振動を受け止めている小さなダメージが蓄積して、少しずつ音が狂うと私は考えています。
ちなみに製作段階で音板を切り込む際、切った音板は反り返ってきます。
これは曲面状に変形されていた力が解放され、元の状態(板状)に戻ろうとする力が働くからだと思います。

反り返っていても音には何の影響もありませんが、作業がやりにくいので、その反った音板をゴムハンマーでガツンと叩き、反りを直します。
その際に音は2~3ヘルツ低くなります。
音板の反りが戻るほどの打撃でその程度の変化ですので、タングドラムも「強い一撃」で一気に音が下がるわけではないかもしれません。
蓄積されたダメージによると考えた方が自然ですね。
いずれの楽器も使用頻度が高いほど、どこかの部分が消耗していくのでしょう。
楽器に限らず「道具」というもの自体が、「使うほど傷む」ということからはさけられないということですね。
結論:問題は「狂うこと」ではない
タングドラムは、
いずれ音が狂う前提で付き合う楽器
です。
重要なのは、
-
狂ったときにどうするか
です。
では、どう向き合うべきか
-
定期的に音をチェックする
-
違和感を覚えたら放置しない
-
必要であれば再チューニングを行う
これだけです。
まとめ
タングドラムは「音が狂う欠陥楽器」ではありません。
**「調整しながら使い続ける楽器」**です。
包丁が研ぎ直しを前提とする道具であるのと同じように、
タングドラムもメンテナンス前提で付き合うことで、
長く良い音を保つことができます。