― 毎日大切に使われていたタングドラムの場合 ―
「強く叩いていないのに、少しずつ音が下がってきた気がする」
「全部の音がおかしいわけではないけれど、前と違う」
これは、ある日突然起きるトラブルではなく、
**長い時間をかけて静かに進行する“音の変化”**の典型的な例です。
今回は、経年変化によって音が狂っていった実例をご紹介します。
使用されていた状況
この楽器を使っていたのは、
「プロパンレディス」と名乗って活動されていた、お孫さんもいる世代の4人組の方々です。
私がこの静岡県の藤枝市にてこの楽器を作り始めたころ、工房の隣近所に住んでいた方々。

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使用楽器:15音階のタングドラム
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主な用途:
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役割分担をしての既存曲演奏
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福祉施設・デイサービス施設での定期的な演奏披露
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練習頻度:
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週1回は工房に集まって合同練習
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自宅で毎日練習される方もいるほど熱心
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楽器経験としては皆さん初心者でしたが、
**「丁寧に、真面目に、長く使う」**という点では理想的なユーザーでした。
「強く打たない」ことは、きちんと意識されていた
練習の際には、私の工房で何度も、
「強く打っちゃダメよ~」
「優しく打つことでこそ、良い響きが出ます」
とお伝えしていました。
皆さんそれをよく理解されており、
意識としては「乱暴に叩く」ようなことは一切なかったと思います。
ただし、年齢的な要因もあり、
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手首のしなやかさが少なくなる
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軽く打っているつもりでも、結果的に重みが乗ってしまう
という打ち方になってしまう方もいらっしゃいました。
これは本人の技量や意識の問題ではなく、身体的な自然な変化です。
音の狂い方は「バラバラ」だった
静岡から東京へ移転し数年後の再会で音の狂いについて相談を受けました。
状態を確認すると、
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一気に音が下がったわけではない
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音の下がり具合にバラつきがある
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ほとんど狂っていない音も残っている
という状態でした。
最大で下がっていた音でも、
狂い幅はおよそ一音程度。
「全部ダメになった」という印象とは、まったく違う状態です。
原因は「金属疲労による音板根元の弱体化」
外見上には変化は現れませんので、
金属疲労による音板根元部分の弱体化と考えています。
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毎日、同じフレーズを繰り返し演奏する
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特定の音を重点的に使う
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長年にわたって微細な力が蓄積される
このような条件が重なることで、
ごくわずかずつ金属が疲労し、音程が下がっていくことがあります。
大切に使っていても、起こり得る変化です。
修正は「溶接」によって対応
今回は、
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音板根元の状態
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狂い幅
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楽器全体のバランス
を見たうえで、
溶接による修正を行いました。
この事例から分かること
このケースで大切なのは、
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雑に扱っていたわけではない
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強く叩いていたわけでもない
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むしろ「理想的な使い方」に近い
それでも、
長年の使用によって音は少しずつ変化することがある
という事実です。
これはタングドラムという楽器の構造上、
避けられない可能性のひとつでもあります。
音の違和感を感じたら
音程に違和感を覚えた場合、
修正方法の選択肢は多くありません。
多くのケースでは、
音板根元の状態を確認したうえで、
溶接による修正が現実的な対応となります。
場合によっては、
音板の切り込みを長くし、
意図的に低い音へ再調整するという方法もありますが、
多くの方は、できる限り元の音程に戻すことを望まれるのではないでしょうか。
そのため、音の変化に気づいた段階で状態を確認することが、
現実的な判断につながります。
▶ アフターフォローについて
音程の違和感や経年変化への対応については、
アフターフォローページで詳しくご案内しています。