工房品と格安品、どちらを選ぶ?
これは本当に難しい話です。
格安品が明らかに劣っているのであれば、答えは簡単です。
しかし実際には、そんなこともありません。
製作者としての立場から答えるなら、もちろん「工房品」です。
けどね、工房品と言ってもいろいろあるわけで。
ピアノやギターのように、ある程度共通した基準があるわけでもないわけで……(アルわけでも、ナイわけ?)
工房品だから必ず良い。
格安品だから必ず悪い。
そんな単純な話ではないと思っています。
ズラリと現物の楽器が並んだ中から「コレ」と決めることは現実的ではないので、もうフィーリングで決めちゃうしかないですよ。
それを使いこなして正解としていく。そのくらい割り切る方がまずは良いでしょう。
格安品が向いている人
大まかに言えば、格安品が向いているのは次のような人です。
・まずはどんな楽器なのか試してみたい
・メロディー演奏をしてみたい(格安品には15音モデルも多いからね)
・何台か揃えてもよいと思っている
・長く続けるかどうか、まだ分からない
・失敗した場合の負担を少なくしたい
ネットで買う時点で、多少のギャンブルではある
タングドラムは、ほとんどがネット販売です。
つまり、購入前に実物の音を聴くことはなかなかできません。
動画の音は録音方法や音の加工によって変わりますし、実物そのものの音とは違います。
少なくともスガイ打楽器の動画は、ノーマイクのスマホ撮影です。
実物の音よりも劣って聞こえていることを自覚しています。
反対に、ネット上には、しっかり音を整えた動画も多いでしょう。
ですので、格安品であろうと工房品であろうと、実物に触れずに買う時点で、多少のギャンブル要素はあります。
それならば、たとえ失敗したとしてもダメージの少ない格安品を選ぶ。
これは十分に理にかなっていると思います。
格安品でも音はきれいです
格安品の音が、工房品より劣るとは言い切れません。
ここでいう「音」は、正確な音程という意味ではなく、音色の話です。
タングドラムは、金属の円盤状の本体の中が空洞になっている、比較的シンプルな構造の楽器です。
メーカーによる違いはありますが、構造そのものに大きな差があるわけではありません。
実際、格安品でも十分にきれいな音は出ます。
工房にも、格安品と呼べるタングドラムが3台あります。
1台はそんなことはありませんが、ほかの2台の音はきれいに整っています。
ただ、特に鳴らしたいという気持ちにはなりません。
ここが少し難しいところです。
きれいな音と、何度も鳴らしたくなる音は別です
音が整っている。
音程も合っている。
きれいに響く。
それでも、その楽器に惹かれるとは限りません。
むしろ、少し雑味がある。
音ごとに表情が違う。
毎回まったく同じようには鳴らない。
そういう部分がある方が、触れていて面白いということは、楽器の世界では普通にあります(むしろそれが普通)。
プロパノータの音は、もう20年近く聴き続けています。
それでも、いまだに飽きることはありません。
これは製作者として、あまりにも自分本位な意見かもしれませんけどね。
ただ、私が工房品に感じている価値は、単に「格安品より音がきれい」ということではありません。
何度も鳴らしたくなる理由があるか。
そこに製作者の考えや、その楽器なりの表情があるか。
工房品を選ぶ意味は、むしろその辺りにあると思っています。
工房品が向いている人
工房品が向いているのは、次のような人でしょう。
・手づくりの楽器が欲しい
・個性のある音が好き
・一台を長く使いたい
・人と同じものでは物足りない
・製作者の考え方も含めて選びたい
・修理や再調整について相談できる方がよい
ただし、工房品であれば必ず個性的で、長く使えると言っているわけではありません。
この楽器には、ピアノやギターのような世界的に統一された基準があるわけではありません。
工房ごとに考え方も、音も、仕上げもかなり違います。
ですので「工房品」という言葉だけで決めるのではなく、その工房がどんな音を作っているのか、どんな考えで製作しているのかを見た方がよいでしょう。
修理や再調整について
通常、楽器は長く使えば何らかのメンテナンスが必要になります。
この点では、工房品にやや分があると思います。
格安品の場合、修理や再調整に対応する販売元は、おそらくほとんどないでしょう。
そんなことをしていたら、価格的に成り立ちませんからね。
工房品でも、修理できるとは限らない
ただし、工房品だからといって、必ずしも修理や調整への対応が十分とは言えず、むしろそれは少数派です。
特に海外製の場合は、購入後にどこへ相談すればよいのか分からないこともあります。
有名な打楽器メーカー製であっても、タングドラムの再調整には無対応だと思います。
この点は、購入前に確認しておいた方がよいでしょう。
見た目の違い
工房製品が高くなる理由のひとつに、外見へのこだわりがあります。
特にスピリチュアルなイメージを重視した製品では、装飾にかなり手をかけているものもあります。
格安品にも、きれいな模様が入ったモデルはあります。
ただ、工場で同じ模様が大量に作られているため、私には逆に安っぽさが強調されているように見えることもあります。
スガイ打楽器でも、以前はマンダラ模様を入れたモデルを作ったことがあります。
ただ、それはあくまでも、その装飾を望んだ方のためのカスタムでした。
この楽器が出始めたころには、私もインテリアとしての要素を打ち出していました。
今は、あまりその方向へは向けていません。
装飾が多いほど、その楽器の価値が高くなるとは考えていないからです。
結局、どちらを選ぶか
まず試してみたい。
長く続けるかどうかも分からない。
失敗したときの負担を小さくしたい。
それなら、格安品を選ぶことは十分に合理的です。
一方で、一台を長く使いたい。
音の個性や、作った人の考え方まで含めて選びたい。
購入後の修理や調整についても相談したい。
そう考えるなら、工房品を選ぶ意味はあると思います。
製作者として、私が勧めるのはもちろん工房品です。
ただし、工房品だから正解で、格安品だから失敗という話ではありません。
格安品にも工房品にも、それぞれ向いている人がいます。
問題は価格の高い安いではなく、自分がその楽器に何を求めているのか、ということなのでしょう。
結局のところ、格安品か工房品かよりも、その楽器を手にした後、どのように音と付き合っていきたいのか。
その方が大切なのかもしれません。
私の理想は、この楽器が入り口となり、その人なりの音楽世界を楽しむための一助となることです。
上手に演奏できる。
人前で演奏する。
結果として、そんなことにつながればうれしいのは間違いありません。
ただ、まずはあなた自身が音を慈しみ、味わっていただけること。
それが第一ですね。